現在、2023年10月1日から始まるインボイス制度対応に向けて、当社でも絶賛システム改修中である。当社ではPOSから出すレシートと営業部が取引先に出す請求書が社内システムの修正対象だ。それ以外は経理が導入しているパッケージシステムで対応可能である。また、今回の修正ではインボイス制度の後にくる、2024年の電子帳簿法対応も合わせて行っている。
修正点はざっと以下だ。
- 交付した請求書(レシート)は保存して検索できるようにする。
- 登録番号や日付など法律の記載事項を請求書(レシート)に載せる。
- 返品などがあった場合は、返還適格請求書を発行する。
- 交付した請求書を修正した場合は、「修正した適格請求書」を発行する。
2と3は正直、たいした問題はない。現行のレシートや請求書のフォーマットを少し変えるだけの話だ。
問題は4の「修正した適格請求書」である。システム的なポイントは以下2点である。
- 修正前と修正後の適格請求書は両方保存しなければならない。
- 法律要件の記載事項以外の箇所、たとえば、単純な誤字修正(請求書の「請」の字を「正」と間違えたなど)であっても「修正した適格請求書」扱いとなる。
つまり、今後は、何か間違いを修正する場合は、元の請求書のレコードはそのまま保管しつつ、新しいレコードを修正データとして追加する必要がある。
これが当社のシステム上、非常に厄介であるし、恐らく多くの企業システムでも厄介になっていると思う。
これまでは何か間違っていたら、システム内のレコードを修正し、請求書やレシートを出し直せば、訂正された請求書が出てきていた。ものすごくシンプルで、誰もがわかりやすかった。
今後は、元のレコードと修正したレコードとに分かれるので、肌感的に分かりにくくなってしまうし、例えば、「今月の請求額」などの統計を取る際も、これまでのシンプルに全レコードを合計という形ではなく、修正前のレコードか修正後のレコードか、などを分けて考える必要が出てくる。
始めはもっとシンプルに考えていたのだが、インボイスコールセンターや国税局電話相談センターなど国税局に問い合わせをしていく中で上記が明らかになった。
この修正の何が最悪というと、この複雑な仕組みを作っても、誰も得しないことである。国税局も「修正後の適格請求書」があれば徴税は充分であり、企業側も「修正後の適格請求書」以外は使うことがない。要は、「修正前の適格請求書」を苦労して保存しておくようにしても、誰もそんなもの見ないし必要もないのである。
必要のないもののために、ものすごい労力を要することになる。特に小売りのレシートで「修正された適格請求書」なんて誰が必要とするのだろうか。元データを修正し「適格請求書」を再発行するのでも、国も企業も個人も誰も困らないのである。
恐らく、法律要件違反だとしても、「修正された適格請求書」の発行をしない、もしくは、要件には従わないと割り切る会社も多い気がする。
ただ、当社の場合、誰もコンプライアンス違反のリスクを負いたくないので、国税局の回答に従うことにした。
輪をかけて最悪なのは、営業部である。営業部は(意味不明だが)システムで生成した請求書をコピーし、エクセルや手書きで請求書を書き直している。(なぜかは不明だが)社印を押す必要がある、(なぜかは不明だが)お客様のフォーマットに合わせる必要がある、などの理由を述べられ、「お客様がそう言っている。」との伝家の宝刀に誰も逆らえず、(完全に不合理で意味不明だが)社内の力関係の都合もあり、営業部の要望は飲まざるを得ない。
これらの手作りの請求書もシステム上に保存することになり、改修箇所が当初の想定より大幅に膨らむこととなった。
せめて法令で修正前の請求書は保存しなくて良いとしてくれたら、みんな幸せになれたのにと思う。